バトルロワイアル 三話目

二日目が、始まった。

結局初日には四人が死んだ。
三日間で七人が死んで一人が生き残るバトルロワイアルとしては、良いスタートを切っていたのだろう。
自分が生き残るためには、後二日で三人を殺さなければならない。
一人は幼馴染、二人は後輩。しかも三人女子。
(僕は少し有利かも知れないな・・・)
「じゃ、私そろそろ行くね」
「僕を殺して?」
「ううん。今から後輩の馬鹿な方が来ると思うよ。たぶん。だから私は情報屋の方を殺して来ようかなって」
あはっ、と笑って幼馴染は武器である日本刀を持った。
「僕を殺さないの?」
「まだ、ね。理由は後輩の馬鹿な方と一緒だと思うよ」
幼馴染は自分より年下が嫌いらしい。
だから名前を呼ばず、語尾に[ナリ]を付ける彼女は馬鹿な方、眼鏡の彼女を情報屋と呼んでいるんだ。
ちなみに[情報屋]というのは本当みたいで、学校内でも密かに噂になっていた。
「そ。じゃあ、気を付けてね」
「そっちこそ、私が帰ってくる前に死んだら嫌だよ!」
日本刀を持って走って行った幼馴染を見送って、僕は視線を戻す。
「・・・どうやら本当に来たみたいだね」
視線の先には予想通り、[馬鹿な方]がいた。
僕はそこを動かず、ナイフをもう一度握り直す。
「・・・・・・逃げなかったんですね、センパイ」
「生き残るためには殺さなきゃ」
「それで妹まで殺したと?」
今の彼女からはいつもの明るさはうかがえなかった。
______本気で殺る気だ。
「ああ。兄として、妹には死亡者が少ないうちに殺してやった方が幸せかと思ってね。早めに殺したんだ」
こんな風にね、と言って僕は彼女の腹目掛けて飛び込んだ。
「___っつ、いきなりすぎですね先輩!」
紙一重にそれを避け、彼女はついに自分の武器を見せた。
「ボクの武器は銃と、ハンデでもらった手榴弾ナリよ。でも先輩ってインドア派だし、ハンデはいらないよね!」
そう言うと彼女は手榴弾のピンとレバーを外して、遠くへ投げた。
飛んでいった手榴弾は近くのビルを巻き込んで爆発。うん、威力は相当あるみたいだね。
「相手が銃じゃ勝ち目無いよね」
「ハンデあげましょーか?」
「いらないよ」
すかさずカバンの中からある薬品を取り出して、彼女に投げた。
ふたの開いたビンは中身をぶちまけて転がる。
「水・・・?」
無色透明の液体が自分に振りかかり、頭にハテナを浮かべたその時。
彼女の顔色が急激に変化した。
「う、うあ、うわぁぁぁぁッ!?」
液体のかかった肌は溶け、血液が流れ出て赤黒くなる。
「それはただの水じゃない。・・・・・・硫酸だよ」
「ん、で、そんな・・・もの・・・ッ」
「死んだ妹のカバンに入っていた武器だよ。使わないのももったいないし、ありがたく使わせてもらったんだ」
激痛に耐えてフラフラと経っていた彼女だったが、やがて地面に膝を付いてうつ伏せに倒れた。
「・・・じゃあ、そろそろ死んでもらおうか」
彼女の手から銃を奪い、狙いを合わせる。
「・・・に・・・げて・・・」
最後まで親友の事を考えているようで、ポロポロ涙を零して泣いている彼女。
「悪いね」
僕は、引き金を引く。
「______」
心臓に小さな穴を開けた彼女は、一粒の涙を落として死んだ。

   [残り三人]